【数学メモ】微分方程式1

微分方程式メモその1です。

1. 代数方程式と関数方程式

例えば、 x + 3 = 5 という式があり、 x について解けと言われれば  x = 5 - 3 を計算して  x = 2 という解を得られます。解きたい文字だけに注目して、その文字だけになるように計算していけば良いです。これを代数方程式といい、値(文字)が求まります。

さて、 \frac{dy}{dx} = 2x について解けと言われた場合は、まずは左辺を見ます。微分の形式になっているので式全体としては「 y という関数を  x微分したものが 3x になる」という意味になります。この計算は値を求めるのではなく、「微分したら  3x になるような関数」を求めることになるので関数方程式といいます。

2. 微分表記の話

微分表記には色々ありますが、例えばある関数  f(x)微分したとすると  f'(x) または  \frac{df(x)}{dx} または  Df(x) と表せます。とくに  D微分演算子といい、 D = \frac{d}{dx}です。どれを使ってもいいのですが、例えば「何で微分するかを明確にしたい」場合は2番目、「テイラー展開マクローリン展開」のような何度も書く必要があるものを簡単に表記したい場合は1番目と使い分けます。ちなみに3番目は微分方程式で使うと楽できます。

微分演算子は1階微分 \frac{d}{dx} = D, 2階微分 \frac{d^{2}}{dx^{2}} = D^{2}, 3階微分 \frac{d^{3}}{dx^{3}} = D^{3} となります。よって、 n微分の場合は  \frac{d^{n}y}{dx^{n}} = D^{n} です。

例えば、 \frac{d^{2} y}{dx^{2}} + \frac{dy}{dx} + 3y = 0微分演算子で表す場合、 D^{2} y + Dy + 3y = 0 となります。つまり、関数を一時的に「1つの文字」としてみなすことができます。(実体は演算子なので単体では意味を持ちません。)

1節で書いた式を微分演算子に直すと、 Dy = 2x となります。

3. 逆演算子

上の式の  Dy D y が積になっている(とみなせる)ので、 y (関数)について解きたい場合、は両辺を  D で割ればいいことになります。「割る」というのは「逆数」を掛けることなので、微分の逆演算、つまり「積分」すればいいことになります。つまり、

 \displaystyle{
\frac{1}{D} = D^{-1} = \int
}

という意味です。

4. 微分方程式を解く

上のルールを適用すれば、

 \displaystyle{
Dy = 2x \\
y = D^{-1} 2x \\
y = \int 2x \ dx \\
y = 2 \left[ \frac{1}{2}x^{2} \right] + C \\
y = x^{2} + C (C : 任意定数)
}

と求めることができます。解は  y となっていますが、これは値ではなく関数です。なので、解を  y に放りこむと

 \displaystyle{
D(x^{2} + C) = 2x \\
\frac{d(x^2)}{dx} = 2x \\
2x = 2x
}

となるので微分方程式の解は  y(x) = x^{2} + C であることが確かめられました。ちなみに任意定数は何でもいいので 0 としました。

5. 微分演算子を使わない方法

 \displaystyle{
\frac{dy}{dx} = 2x \\
dy = 2x \ dx
}

となります。 dx を両辺に掛けると右辺は  2x dx の積、つまり「微小な区間を掛ける」ことになります。式全体を見ると、「 2x は微小区間  dx だけ変化させると微小区間  dy だけ変化する」という意味です。微小区間を連続につなげて1つの関数としての変化を見たいので、 dx積分します。積分すると微小ではなくなるので  d は必要ありません。

 \displaystyle{
dy = 2x \ dx \\
y = \int 2x \ dx \\
y = x^{2} + C (C : 任意定数)
}

これで解を得られました。どちらの方法を使っても同じ解になるので、解きやすいほうで良いと思います。

6. 右辺の項が増えても同じ

右辺にもう一つ項を足してみます。

 \displaystyle{
Dy = 3x^{2} + 2x \\
y = D^{-1} (3x^{2} + 2x) \\
y = \int (3x^{2} + 2x) \ dx \\
y = \left[ \frac{3}{3} x^{3}+ \frac{2}{2} x^{2} \right] + C \\
y = x^{3} + x^{2} + C (C : 任意定数)
}

右辺が増えても同じですね。任意定数を 0 にして微分すれば  3x^{2} + 2x になります。検算は同様に代入して計算すれば良いです。

右辺を三角関数にしてみます。第二項は合成関数なので置換積分が必要ですね。

 \displaystyle{
Dy = {\rm cos} \ x + {\rm sin} \ 2x \\
y = D^{-1} ({\rm cos} \ x + {\rm sin} \ 2x ) \\
y = \int ({\rm cos} \ x + {\rm sin} \ 2x ) \ dx \\
y = \left[ {\rm sin} \ x - \frac{1}{2} {\rm cos} \ 2x \right] + C \\
y = {\rm sin} \ x - \frac{1}{2} {\rm cos} \ 2x + C (C : 任意定数)
}

置換積分
 {\rm sin} \ x 2x が合成されているので、 2x を置換します。すると、微分したときに 2 が残ってしまうので逆数を掛けて打ち消します。 dx 同士が約分出来て、微小区間  d(2x)積分できるようになります。

 \displaystyle{
 \int {\rm sin} \ 2x \ dx \\
= \int {\rm sin} \ (2x) \ dx \ \frac{d(2x)}{dx} \ \frac{1}{2} \\
= \frac {1}{2} \int {\rm sin} \ (2x) \ d(2x) \\
= - \frac{1}{2} {\rm cos} \ 2x
}

これを利用すれば上のような式になります。

参考文献

記号法ですぐに解ける微分方程式