【数学メモ】微分方程式 2

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1.1 方程式の種類

式が  x^{2} + x + 1 = 3 のような形で、文字について解くような式を代数方程式といい、 \frac{d^{2}y}{dx^{2}} + \frac{dy}{dx} + 3y = 0 のような形で、この式が成立するような関数を求める式を関数方程式といいます。

1.2 微分演算子と逆演算子

微分記号  \frac{d}{dx} をさらに簡略化して  D で表現したものを微分演算子といいます。1.1 の関数方程式に対して、この記号を用いると

 \displaystyle{
D^{2}y + Dy + 3y = 0
}

で表現できます。また、微分演算子の逆数は逆演算子といい、積分することを意味します。

 \displaystyle{
\frac{1}{D} = D^{-1} = \int
}

1.3 例

ある関数  y微分したものが  2x になるための方程式(微分方程式)を解いてみます。

 \displaystyle{
\frac{dy}{dx} = 2x \\
Dy = 2x \\
y = D^{-1} \ 2x \\
y = \int 2x \ dx \\
y = \left[ \frac{2}{2}x^2 \right] + C \\
y = x^{2} + C (C : 任意定数)
}

こんな感じで1つの関数について解くと、1つの関数の解と任意定数で表現できます。

2. 同次(斉次)の1階微分方程式

同次(斉次)は右辺が 0 になっている方程式のことです。例えばこんな関数方程式を考えます。

 \displaystyle{
\frac{dy}{dx} - 5y = 0 \\
Dy - 5y = 0
}

この方程式はある関数  y を1階微分したものに、ある関数  y を5倍したものを引くと 0 になるような式になっています。とりあえず見慣れた形に直すために、 -5y を移項します。

 \displaystyle{
Dy = 5y
}

ここで、先ほどの 1.3の例 と異なるのは、右辺と左辺で同じ関数になっている点です。左辺の  D を打ち消すためには両辺積分する必要がありますが、左辺と右辺で同じ関数なので、右辺の関数は積分しても関数の形が変わらないような関数を考える必要があります。この条件に当てはまる関数は指数関数  e です。

つまり、微分方程式を解くコツは指数関数を使うことです。ちなみに指数関数の逆関数は対数関数  log ですが、これも後に使うことになります。

微分方程式を解くには因数分解から求まる解  \lambda を求めて、 Ce^{\lambda x} に代入することで求めることができます。この解を求める式を補助方程式(特性方程式)として用います。

 \displaystyle{
Dy - 5y = 0 \\
(D - 5)y = 0\\
補助方程式(特性方程式)より、\\
\lambda = 5 \\
y(x) = Ce^{5x} (C : 任意定数)
}

2問目です。

 \displaystyle{
2Dy - 3y = 0 \\
(2D - 3)y = 0\\
補助方程式(特性方程式)より、\\
\lambda = \frac{3}{2} \\
y(x) = Ce^{\frac{3}{2}x} (C : 任意定数)
}

3問目です。

 \displaystyle{
Dy + ay = 0 \\
(D + a)y = 0\\
補助方程式(特性方程式)より、\\
\lambda = -a \\
y(x) = Ce^{-ax} (C : 任意定数)
}

これで同次1階微分方程式を解けます。

3. 同次(斉次)の2階微分方程式

2階微分方程式なので微分演算子で書くと  D^{2} になることが想像つくかもしれません。2次式なので、因数分解の解の公式も使うことができます。2次になっても1次微分方程式のように解くことができますが、解が2つになります。これを踏まえて、因数分解で解が  \lambda_{1},  \lambda_{2} と出たとき、 C_{1}e^{\lambda_{1} x} + C_{2}e^{\lambda_{2} x} に代入すれば求められます。

 \displaystyle{
\frac{d^{2}y}{dx^{2}} + \frac{dy}{dx} + 6y = 0\\
D^{2}y + Dy - 6y = 0 \\
(D + 3) (D - 2)y = 0 \\
補助方程式(特性方程式)より、\\
\lambda = -3, 2 \\
y(x) = C_{1}e^{-3x} + C_{2}e^{2x} (C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}

3.1 重解をもつ場合

重解をもつ場合は注意が必要です。解が  \lambda のみになった場合は  e^{\lambda x} (C_{1} + C_{2} x) に代入すれば求められます。

 \displaystyle{
D^{2}y + 4Dy + 4y = 0 \\
(D + 2)^{2}y = 0 \\
補助方程式(特性方程式)より、\\
\lambda = -2 (2重解)\\
y(x) = e^{-2 x} (C_{1} + C_{2} x) (C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}

3.2 解の公式を使う場合

解の公式を使う計算もやっておきます。

 \displaystyle{
D^{2}y - 3Dy + 5y = 0 \\
(D^{2} - 3D + 1) y = 0 \\
補助方程式(特性方程式)は \\
解の公式 \lambda = \frac{-b \pm \sqrt{b^{2} - 4ac}}{2a} より、\\
\lambda = \frac{3 \pm \sqrt{9 - 4 \cdot 1 \cdot 1}}{2 \cdot 1}y = 0 \\
\lambda = \frac{3 + \sqrt{5}}{2},  \frac{3 - \sqrt{5}}{2} \\
y(x) = C_1 \ {\rm exp} \left( \frac{3 + \sqrt{5}}{2} x \right) + C_2 \ {\rm exp} \left( \frac{3 - \sqrt{5}}{2} x \right) \\
(C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}

ちなみに、exp (exponential) は  e と同じ意味です。指数が細かくて見づらいのでこの形にしました。

3.3 虚数が出る場合

また、虚数が出る場合もあります。

 \displaystyle{
D^{2}y - 4Dy + 5y = 0 \\
(D^{2} - 4D + 5) y = 0 \\
補助方程式(特性方程式)は解の公式より、\\
\lambda = \frac{4 \pm \sqrt{16 - 4 \cdot 1 \cdot 5}}{2 \cdot 1} = \frac{4 \pm \sqrt{-4}}{2} \\
\lambda = \frac{4 + \sqrt{-4}}{2} , \frac{4 - \sqrt{-4}}{2} \\
\lambda = \frac{4 + 2i}{2} , \frac{4 - 2i}{2} \\
\lambda = 2 + i , 2 - i \\
y(x) = C_{1}e^{(2 + i)x} + C_{2}e^{(2 - i)x} (C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}

虚数があると見栄えがあまりよろしくないので、オイラーの公式を用いると美しくなります。虚数の係数を  b とすると、オイラーの公式 e^{i b x} = {\rm cos} \ b x + i \ {\rm sin} \ b x です。ただし、解の公式を解いてみると正と負の虚数をもつことになるので、 e^{i b x} に加えて  e^{-i b x} も必要です。

微分方程式の解では線形和になるので、

 \displaystyle{
C_{1} e^{i b x} + C_{2} e^{-i b x} \\
= C_{1} ({\rm cos} \ b x + i \ {\rm sin} \ b x ) + C_{2} ({\rm cos} \ b x - i \ {\rm sin} \ b x) \\
= (C_{1} \ {\rm cos }\ b x + C_{2} \ {\rm cos }\ b x) + i (C_{1} \ {\rm sin }\ b x - C_{2} \ {\rm sin }\ b x ) \\
= (C_{1} + C_{2}) {\rm cos} \ b x + i(C_{1} - C_{2}) {\rm sin} \ b x \\
}

このように cos 同士、sin 同士でまとめると実部と虚部で分けることができます。ちなみに、任意定数  (C_{1} + C_{2}) i(C_{1} - C_{2}) はさらに新しい任意定数として定義できます。変数ではないので、任意定数を任意定数としても問題ありません。

 e^{(2 + i)x} e^{2x} \times e^{ix} です。 e^{ix} 虚数)はオイラーの公式で表現できているので、 e^{2x} (実数)が残ります。この係数を  a とすれば

 \displaystyle{
y(x) = e^{ax}  (C_{1} \ {\rm cos} \ \lambda x + C_{2} \ {\rm sin} \lambda x)
}

となります。微分方程式の解をこのような形に置き換えればきれいに書けます。先ほどの解をこの形に直すと、

 \displaystyle{
y(x) = C_{1}e^{(2 + i)x} + C_{2}e^{(2 - i)x} \\
y(x) = e^{2x} (C_{1} \ {\rm cos} \ x + C_{2} \ {\rm sin} \ x) \\
(C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}

となります。

4. いろいろ解く

問題

 \displaystyle{
(1) \frac{d^{2}y}{dt^{2}} + 5 \frac{dy}{dt} - 6y = 0 \\
(2) \frac{d^{2}y}{dt^{2}} - 6 \frac{dy}{dt} + 9 y = 0 \\
(3) 2\frac{d^{2}y}{dt^{2}} - 8 \frac{dy}{dt} + 2y = 0 \\
(4) \frac{d^{2}y}{dt^{2}} + 4 \frac{dy}{dt} + 7y = 0 \\
}

解答

 \displaystyle{
(1) \frac{d^{2}y}{dt^{2}} + 5 \frac{dy}{dt} - 6y = 0 \\
D^{2}y + 5Dy - 6y = 0 \\
(D^{2} + 5D - 6) y = 0 \\
(D + 6)(D - 1) y = 0 \\
補助方程式より \\
\lambda = -6, 1 \\
y(t) = C_{1} e^{-6 \lambda t} + C_{2} e^{\lambda t} (C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}


 \displaystyle{
(2) \frac{d^{2}y}{dt^{2}} - 6 \frac{dy}{dt} + 9 y = 0 \\
D^{2}y -6Dy + 9y = 0\\
(D^{2} -6D + 9)y = 0\\
(D - 3)^{2} = 0\\
補助方程式より、\\
\lambda = 3 (二重解) \\
y(t) = e^{3 t} (C_{1} + C_{2} t) (C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}


 \displaystyle{
(3) 2\frac{d^{2}y}{dt^{2}} - 8 \frac{dy}{dt} + 2y = 0 \\
2D^{2}y - 8Dy + 2y = 0 \\
(2D^{2} - 8D + 2) y = 0 \\
補助方程式より \\
\lambda = \frac{8 \pm \sqrt{64 - 4 \cdot 2 \cdot 2} }{2 \cdot 2} = \frac{8 \pm 4\sqrt{3} }{4} \\
\lambda = 2 \sqrt{3}, -2\sqrt{3} \\
y(t) = C_{1} e^{2 \sqrt{3} t } + C_{2} e^{-2 \sqrt{3} t } (C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}


 \displaystyle{
(4) \frac{d^{2}y}{dt^{2}} + 4 \frac{dy}{dt} + 7y = 0 \\
D^{2}y + 4Dy + 7y = 0 \\
(D^{2} + 4D + 7) y = 0 \\
補助方程式より \\
\lambda = \frac{-4 \pm \sqrt{16 - 4 \cdot 1 \cdot 7}}{2} = \frac{-4 \pm 2\sqrt{-3}}{2} \\
\lambda = -2 + \sqrt{3}i , -2 - \sqrt{3}i \\
y(t) = C_{1} e^{(-2 + \sqrt{3}i)t } + C_{2} e^{(-2 - \sqrt{3}i)t } \\
オイラーの公式を用いると \\
y(t) = e^{-2t} (C_{1} \ {\rm cos} \ \sqrt{3}t + C_{2} \ {\rm sin } \ \sqrt{3}t ) \\
(C_{1}, C_{2} : 任意定数)
}

参考文献

記号法ですぐに解ける微分方程式