【量子力学メモ】光は波?

前回、光は粒子であることが分かりました。

1. 光は波

プランクの式には、実はまだ続きがありまして、プランク定数に注目してみます。ちなみにプランクの式は

{\displaystyle 
E = n h \nu
}

でした。で、この式の  \nu って振動数なのですが...振動ということは波ですね。さらに、振動数は

{\displaystyle 
\nu = \frac{光の速さ}{波長} = \frac{c}{\lambda}
}

です。光の速さ  c は約秒速30万[km/h] なので、定数です。つまり、波長  \lambda に依存していたわけですが、ちょっと解釈を変えてみましょう。波長はそもそも、波が1回振動したときの距離です。波が1回振動するということは、単位円上で角度  \theta = 0° から  \theta = 360° までぐるっと1周、すなわち弧度法でいう  2\pi 分です。

そこで、この1周する分のプランク定数を使うといろんなことが分かるようになります。 2\pi あたりのプランク定数とは、1波長におけるエネルギーと振動数の関係を数値化したものになり、このような式になります。そして、これで得られる定数をディラック定数 ( \hbar = 1.054 \times 10^{-34} [Js]) と言います。

{\displaystyle 
\hbar = \frac{h}{2\pi}
}

さて、それではこの式を用いて光子のエネルギーおよび運動量をもう一度求めてみます。

1.1 ディラック定数による光子のエネルギー

元の式は

{\displaystyle 
E = h \nu
}

でした。ここに、 \hbar を代入します。このままでは代入できないので、 h について解くと、

{\displaystyle 
h = \hbar (2\pi)
}

です。これを代入すると

{\displaystyle 
E = \hbar (2\pi) \cdot \nu
}

となります。この式、よく見てみると振動数と 2\pi の積になっています。だから何だという話ですが、この積は角振動数 \omega と同じです。よって、上記の式はさらに書き直すことができて、

{\displaystyle 
E = \hbar \omega
}

となります。

あらら?粒子だったはずの光子が波になってしまいました。

1.2 ディラック定数による光子の運動量

次は運動量を考えてみます。運動量の式はこれでした。

{\displaystyle 
p = \frac{h}{\lambda} 
}

同様に、ディラック定数の式を用いて  h に代入してみます。

{\displaystyle 
p = \frac{\hbar (2\pi)}{\lambda} 
}

再びよく見てみると、 \frac{2\pi}{\lambda} は1波長当たりのうねる波の数、すなわち波数 k を意味しています。ということは、更に書きかえられます。

{\displaystyle 
p = \hbar \frac {(2\pi)}{\lambda} = \hbar k
}

となります。これまた不思議です。運動量は波数によって決まる、つまり波です。

ここでも粒子ではなく波です。

結局、光子は粒子なのか、波なのか気になるところです.

ここまでをまとめると、

{\displaystyle 
光子のエネルギー : E = \hbar \omega  光子の運動量 : p = \hbar k
}

となることが分かりました。

2. 粒子と波動の二重性

結局、理論だけでは勝負がつかなかったのでド・ブロイという物理学者が2重スリットを使って実験しました。参考として実験映像を見るといいかもしれません。

www.youtube.com

これが実験結果です。スリットには非常に狭い幅で縦線の穴が開いており、そこを電子が通過してスクリーンに衝突します。その位置を記録することによって、正体をつかむことができます。映像の最初のほうは確かに粒子のように見えます。縦線の穴が開いているスリットを通過したあと、その形でスクリーンに跡が付くはずです。しかし、20分も経過すると中心部分から端のほうへかけて干渉縞のような模様になります。

この実験から粒子と波の2つの性質を持つことになると結論付けられました。これが粒子と波動の二重性です。

3. 波を表す式

粒子と波動の2つの性質を持つので、粒子と波動の考え方が必要になります。

さて、波と言えば三角関数ですね。三角関数には cos と sin があります。

と、その前に波には2種類あります。波数をそれぞれ  a, b とすると
(1) 振動し続ける波 cos  ax , sin  ax
(2) 減少していく波  e^{-bx}
なぜ増加はないかというと、あらゆる物理法則(例えば空気抵抗や摩擦など)によって、外力が加わらない限り振動は減衰していくためです。

上記2つの波を sin 関数および指数関数を用いて表すとこんな感じです。

f:id:takunology:20200623193724p:plain

(3) の波は (1) と (2) を合成した、「減少しながら振動し続ける波(減衰振動)」です。(1) と (2) を合成することで、今まで2つあった式が1つにまとまります。つまり、 sin を用いた場合、

{\displaystyle 
波 = {\rm{sin}} \ ax \cdot e^{-bx}
}

となり、場合分けができるようになります。

{\displaystyle 
b=0 のとき、 {\rm{sin}} \ ax \cdot e^{0} =  {\rm{sin}} \ ax
}

{\displaystyle 
a=0 のとき、 {\rm{sin}} \ 0 x \cdot e^{-bx} = e^{-bx}
}

{\displaystyle 
a \neq 0 かつ b \neq 0 のとき、 {\rm{sin}} \ a x \cdot e^{-bx}
}

これで、波の式を1つにまとめることができました。ただし、注意が必要なのは三角関数には sin と cos があるので実際にはもう1つあります。

さて、ここまでで光子の波動性を解くための波の式を準備できました。