1. ラグランジュ方程式
ラグランジュ方程式はこれです。
この式の何がすごいかというと「ニュートンの運動方程式をどんな座標系でも扱える」点です。
1.1 一般化座標 
座標系と言えば直交座標、極座標、円筒座標などがありますね。
で、この方程式の は一般化座標です。座標と言えば直交座標ならば
, 極座標ならば
などで表現しますが、座標系に依存しないのでまとめて(一般化して)
と書きます。
一般化座標 は時間
によって変化するので
という関数です。座標は言い換えればその時点での位置
なので1階微分すれば速度
, 2階微分すれば加速度
というよくご存じな形になります。
また、物理学において時間微分をドットで表現する風習があるので,
で表現されます。これが左辺第1項の一般化速度 です。「ある座標
における速度
」ですね。
1.2 ラグランジアン 
次は左辺第1項と第2項に出てくる についてですね。
この子はラグランジアンといい、運動エネルギー とポテンシャルエネルギー
の差を意味しています。
で、運動エネルギーはご存知の通り
です。物理学の風習に従ってドットで表すと, 速度は位置の微分なので になります。
ポテンシャルエネルギーは「系(あらゆる物体)のもつ潜在的なエネルギー」なので状況によって変化します。よく聞くのは位置エネルギーですかね。本でも筆箱でもなんでもいいので, 自分の顔の位置から自分の足にむけて落下させてみましょう。多分痛いと思います。この痛みは衝撃であり、これを決めているのが位置エネルギーです。
これを例に考えてみると, 落下スピードを決めているのは重力 です。落下させるにはある程度高さが必要なので, 高さ
も考慮しましょう。あと、重ければ重いほど足が痛くなる(打撲や骨折する)ので質量
も関係していますね。
位置エネルギーのほかにも弾性(バネ)エネルギーや熱エネルギー、電気エネルギーなどがあります。ちなみにエネルギーは大きさの指標になるのでスカラー量です。
運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和は力学的エネルギー保存則(=一定)を意味しているのは分かります。で、問題は「差」が何を意味しているのかですね。ここからがちょっと大変かもしれません。
1.3 ニュートンの運動方程式
ラグランジアンがなぜ差で表現されるかはニュートンの運動方程式を考える必要があります。
皆さんご存知の運動方程式と言えばこれですね。
先ほどと同じように物理学の風習でドット(加速度は位置の2階微分なのでドット2つ)を使います。
で、ポテンシャルエネルギーは位置エネルギーで考えると、足に落ちた瞬間の高さはゼロになります。つまり、「落下するにつれて力学的エネルギーが大きくなる代わりに、位置エネルギーが小さくなっていく」ことになりますね。力学的エネルギーを , 高さを一般化座標として考えれば
となります。
さて、あとは運動エネルギーですね。分数を消すために速度 で微分してみます。
何か運動方程式の に似てきましたね。ということは、この式をさらに時間微分してみると
あんらまぁ!運動方程式に代入できる形になりましたね。
あとは運動方程式 に代入して、速度
を一般化速度
に替えれば
となりました。この式は運動方程式をエネルギーの式で表現したものになります。
正直、これでいいのではと思うかもしれませんが運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの2種類を扱うのは美しくないので、1つにまとめてしまいます。このとき、左辺と右辺について考えてみます。
1.4 ラグランジアン形式にする
上記の式の左辺は運動エネルギー を一般化速度
で微分したものなので
右辺はポテンシャルエネルギー を一般化座標
で微分したものなので
偏微分を用いることで運動エネルギーあるいはポテンシャルエネルギーを表現できるので、それぞれを1つの関数としてまとめておくことができます。よって、 を用いて
となります。これがラグランジュ方程式です。ラグランジアンは一般化座標と一般化速度に依存しているので の関数になります。
参考文献
基幹講座物理学 解析力学