【解析力学メモ】ラグランジュ方程式

1. ラグランジュ方程式

ラグランジュ方程式はこれです。

{\displaystyle 
\frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) - \frac{\partial L}{\partial q} = 0
}

この式の何がすごいかというと「ニュートン運動方程式をどんな座標系でも扱える」点です。

1.1 一般化座標  q

座標系と言えば直交座標、極座標、円筒座標などがありますね。

で、この方程式の  q は一般化座標です。座標と言えば直交座標ならば  (x, y), 極座標ならば  (r, \theta) などで表現しますが、座標系に依存しないのでまとめて(一般化して)  q と書きます。

一般化座標  q は時間  t によって変化するので  q(t) という関数です。座標は言い換えればその時点での位置  x なので1階微分すれば速度 v, 2階微分すれば加速度  a というよくご存じな形になります。

また、物理学において時間微分をドットで表現する風習があるので,

{\displaystyle 
\frac{d}{dt} q = \dot{q}
}

で表現されます。これが左辺第1項の一般化速度  \dot{q}です。「ある座標  q における速度  \dot{q}」ですね。

1.2 ラグランジアン  L

次は左辺第1項と第2項に出てくる  L についてですね。

この子はラグランジアンといい、運動エネルギー  T とポテンシャルエネルギー  U の差を意味しています。

{\displaystyle 
L = T - U
}

で、運動エネルギーはご存知の通り

{\displaystyle 
T = \frac{1}{2} mv^{2} = \frac{1}{2} m \dot{x}^{2}
}

です。物理学の風習に従ってドットで表すと, 速度は位置の微分なので  \dot{x} になります。

ポテンシャルエネルギーは「系(あらゆる物体)のもつ潜在的なエネルギー」なので状況によって変化します。よく聞くのは位置エネルギーですかね。本でも筆箱でもなんでもいいので, 自分の顔の位置から自分の足にむけて落下させてみましょう。多分痛いと思います。この痛みは衝撃であり、これを決めているのが位置エネルギーです。

これを例に考えてみると, 落下スピードを決めているのは重力  g です。落下させるにはある程度高さが必要なので, 高さ  h も考慮しましょう。あと、重ければ重いほど足が痛くなる(打撲や骨折する)ので質量  m も関係していますね。

{\displaystyle 
U = mgh
}

位置エネルギーのほかにも弾性(バネ)エネルギーや熱エネルギー、電気エネルギーなどがあります。ちなみにエネルギーは大きさの指標になるのでスカラー量です。

運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和は力学的エネルギー保存則(=一定)を意味しているのは分かります。で、問題は「差」が何を意味しているのかですね。ここからがちょっと大変かもしれません。

1.3 ニュートン運動方程式

ラグランジアンがなぜ差で表現されるかはニュートン運動方程式を考える必要があります。

皆さんご存知の運動方程式と言えばこれですね。

{\displaystyle 
F = ma = m \ddot{x} = m \ddot{q}
}

先ほどと同じように物理学の風習でドット(加速度は位置の2階微分なのでドット2つ)を使います。

で、ポテンシャルエネルギーは位置エネルギーで考えると、足に落ちた瞬間の高さはゼロになります。つまり、「落下するにつれて力学的エネルギーが大きくなる代わりに、位置エネルギーが小さくなっていく」ことになりますね。力学的エネルギーを  F , 高さを一般化座標として考えれば

{\displaystyle 
F = - \frac{\partial U}{\partial q}
}

となります。この式をニュートン運動方程式  F に代入すると

{\displaystyle 
m \ddot{q} = - \frac{\partial U}{\partial q}
}

となります。

さて、あとは運動エネルギーですね。分数を消すために速度  \dot{x}微分してみます。

{\displaystyle 
\frac{d}{d \dot{x}} T = \frac{d}{d \dot{x}} \frac{1}{2} m \dot{x}^{2}
}

{\displaystyle 
\frac{d T}{d \dot{x}} = m \dot{x}
}

何か運動方程式 m \ddot{x} に似てきましたね。ということは、この式をさらに時間微分してみると

{\displaystyle 
\frac{d}{dt} \left( \frac{d T}{d \dot{x}} \right) = m \ddot{x}
}

あんらまぁ!運動方程式に代入できる形になりましたね。 あとは運動方程式  m \ddot{x} に代入して、速度  \dot{x} を一般化速度  \dot{q} に替えれば

{\displaystyle 
\frac{d}{dt} \left( \frac{\partial T}{\partial \dot{q}} \right) = - \frac{\partial U}{\partial q}
}

となりました。この式は運動方程式をエネルギーの式で表現したものになります。

正直、これでいいのではと思うかもしれませんが運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの2種類を扱うのは美しくないので、1つにまとめてしまいます。このとき、左辺と右辺について考えてみます。

1.4 ラグランジアン形式にする

上記の式の左辺は運動エネルギー T を一般化速度  \dot{q}微分したものなので

{\displaystyle 
\frac{\partial T}{\partial \dot{q}}
}

右辺はポテンシャルエネルギー  U を一般化座標  q微分したものなので

{\displaystyle 
- \frac{\partial U}{\partial q}
}

偏微分を用いることで運動エネルギーあるいはポテンシャルエネルギーを表現できるので、それぞれを1つの関数としてまとめておくことができます。よって、 L = T - U を用いて

{\displaystyle 
\frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}} \right) - \frac{\partial L}{\partial q} = 0
}

となります。これがラグランジュ方程式です。ラグランジアンは一般化座標と一般化速度に依存しているので  L(q, \dot{q}) の関数になります。

参考文献

基幹講座物理学 解析力学